はじめに:なぜ、御社のECサイト計画は「今のままでは」危険なのか

「うちもそろそろオンラインショップ(EC)を始めないとマズいんじゃないか?」



「でも、社内に詳しい人間なんて一人もいないし……」
もしあなたが、社長からの無茶振りや、時代の流れへの焦りから、たった一人でこの「EC立ち上げ」という難題に直面しているのなら、まずは深呼吸をしてください。そして、この言葉を贈らせてください。
「知識ゼロからのスタートこそ、成功への最短ルートになり得る」
私はこれまで、数多くの中小企業のマーケティングやECサイト支援に携わってきました。そこで見てきたのは、「立派なシステムを入れたのに全く売れない企業」と、「最初は手作り感満載だったのに、着実にファンを増やしていく企業」の残酷なまでの明暗です。
厳密な統計はないものの、中小企業のECサイト撤退率は「初年度3割、2年目で5割」とも言われ、10年以内に9.5割が廃業するとの見方もあり、80%以上が撤退する可能性も指摘されています。開設から1年以内で3社に1社以上が、1年も経たずに「やっぱり無理だった」と店を畳んでいるのです。なぜ、これほど多くの企業が失敗するのでしょうか?
彼らに情熱がなかったからでしょうか? 商品が悪かったからでしょうか?
いいえ、違います。「ECサイトシステムの選び方」と「ECサイトの始め方」を、少し間違えてしまっただけなのです。
「大手も使っているから安心だろう」と高機能なシステムを選んでしまう。
「お店を作れば、お客さんは自然と来てくれるだろう」と信じてしまう。
これらは、Webに詳しくない方が陥りがちな、しかし致命的な「思い込み」です。
この記事では、そんな「中小企業ECの落とし穴」を回避し、知識ゼロ・専任担当不在の状態からでも、確実に成果を出すための「鉄則」をお伝えします。専門用語は使いません。難しいITの話もしません。
お伝えするのは、失敗のリスクを極限までゼロに近づけ、小さく産んで大きく育てるための、非常に現実的で泥臭い、しかし確実なロードマップです。
読み終える頃には、あなたの目の前にかかっていた霧が晴れ、「これなら自社でも、私一人でもできそうだ」と、具体的な第一歩が見えているはずです。
それでは、一緒に「失敗しないEC」の第一歩を踏み出しましょう。
第1章 【警告】中小企業ECが陥る3つの「落とし穴」


なぜ多くの中小企業が、夢見て始めたオンラインショップを1年足らずで閉じることになってしまうのか。その原因は、驚くほど共通しています。ここでは、代表的な3つの「落とし穴」をご紹介します。
落とし穴1:高機能システム過信の罠
「せっかくやるなら、将来のことを見越していいシステムを入れておこう」
「安物買いの銭失いにはなりたくない」
経営者や真面目な担当者ほど、こう考えがちです。そして、Shopifyのような世界標準の高機能カートや、制作会社に数百万円を払って作るフルスクラッチ(最初から全部つくる)のサイトを選んでしまいます。
確かに、それらは素晴らしいシステムです。機能は豊富で、拡張性も無限大です。しかし、ここに大きな罠があります。
機能が多すぎることは、初心者にとっては『使いこなせない』というリスクでしかない
例えば、Shopifyは月額3,650円から始められますが、少し便利な機能を追加しようとすると、有料の「アプリ」を入れる必要があります。さらに、デザインをカスタマイズしようとすればHTMLやCSSの知識が求められます。
中小企業の現場でよく起こるのが、「簡単なバナーひとつ差し替えるのに、いちいち制作会社に依頼しなければならない」「機能が多すぎて、どこを触ればいいのか分からない」という事態です。
高機能カートを導入した中小企業の多くが、「機能を持て余しているのに、毎月の固定費と制作会社の保守費用だけが出ていく」という状態に陥り、解約やプランダウンを検討するといった事態に陥るところも少なりありません。
「大は小を兼ねる」と言いますが、ECシステムに関しては「大は運用コストを肥大化させる」というのが正解です。
落とし穴2:「作れば売れる」という幻想(集客後回し)
次に多いのが、「お店をオープンさせることがゴールになっている」パターンです。
「綺麗なデザインのサイトができた! これで注文が入るぞ!」
そう息巻いて公開ボタンを押した翌日、管理画面に表示されるアクセス数は「0」か、あるいは社員が見た分の「3」くらいでしょう。
これが、リアル店舗とネットショップの決定的な違いです。
リアル店舗なら、駅前や商店街に店を出せば、通りがかりの人が入ってきてくれます。しかし、ネット上の店舗は、例えるなら無人島の森の奥深くに、看板も出さずにひっそりと店を構えたようなものです。
誰にも気づかれません。検索してもヒットしません。
とくにECの検索はライバルも多くなり、また大手が有利なので検索エンジンに登録してもらえるかも危うい。
調査事例にあるアパレル企業のケースでは、数百万円をかけてこだわりのECサイトを作りましたが、「集客」の予算もプランも全く考えていませんでした。「良いものを作れば見つけてもらえる」と信じていたのです。
結果、オープンから3ヶ月経っても売上は月数万円。モチベーションが折れ、サイトの更新も止まり、そのまま放置されてしまいました。
断言します。ECサイトの成功を左右するのは、商品が3割、システムが2割、集客が5割です。 集客プランなきEC開設は、無人島に城を建てるのと同じです。
落とし穴3:隠れたコストと運用負荷の見落とし
「無料で作れる」という謳い文句に惹かれて始めたものの、「思っていたよりお金と手間がかかる」と音を上げるケースも後を絶ちません。
初期費用や月額費用が「無料」でも、EC運用には必ず以下のコストがかかります。
1. 決済手数料: カード会社やコンビニ決済の手数料(売上の3〜5%程度)。
2. 配送料: 商品をお客様に届ける送料。送料無料にするなら店舗負担です。
3. 担当者の工数: これが最も見落としがちで、最も重いコストです。
- 商品説明文の作成
- 注文確認メールの送信
- 梱包・発送作業
- 問い合わせ対応
- 在庫管理
- メルマガ作成
- 顧客対応
「専任はおけないから、総務の佐藤さんが兼任でやって」
このように軽く始めると、佐藤さんは日々の業務に忙殺され、ECサイトの更新(新商品追加やニュース更新)など手が回らなくなります。
「更新されないサイト」は、お客様から見れば「もう営業していない廃墟」と同じです。 信頼を失い、さらに売れなくなるという悪循環に陥ります。
これらの落とし穴に共通するのは、「見通しの甘さ」と「身の丈に合わない選択」です。
では、我々中小企業はどうすればいいのでしょうか? 次章で、その「正解」を提示します。
第2章 【解決策】初心者が選ぶべきプラットフォームの「正解」


失敗の原因が分かれば、対策はシンプルです。
まずはコストと手間を極限まで抑え、売上が立ってからシステムをアップグレードする
これに尽きます。いわゆる「スモールスタート」です。
ここでは、主要なプラットフォームを比較しながら、あなたに最適な選択肢を提示します。
プラットフォーム比較:あなたの会社はどこから始めるべき?
C2の調査データを基に、代表的な4つのサービス(Shopify, BASE, STORES, 楽天市場)を比較しました。
| プラットフォーム | 初期費用・月額 | 手数料 | 使いやすさ | デザイン性 | 推奨される企業 |
| Shopify | 月3,650円~ | オンライン:3.25〜3.55% 外部決済:0.6%~2% | ★★★☆ (中級者向) | ★★★★★ (自由自在) | 月商300万円以上 本格的にECを事業の柱にする覚悟があり、担当者が勉強熱心な場合。 |
| BASE | スタンダード:無料 グロースプラン:月16,580円 | 2.9〜3.6%+(40円+3%:スタンダードのみ) | |★★★★☆ (初心者向) | ★★★☆☆ (テンプレート) | 小規模・10商品以内 とにかく手軽に、今日からでも販売を開始したい場合| |
| STORES | フリープラン:無料 ベーシックプラン:月2,980 | 3.6〜5.5% | ★★★★★ (超初心者向) | ★★★★☆ (シンプル) | スマホメイン・実店舗有 パソコン操作が苦手でも、スマホで感覚的に運用したい場合。 |
| 楽天市場 | 初期6万円 月2.5万〜13万円〜 | パソコン:2.0~6.5% モバイル:2.5~7.0% | ★★☆☆☆ (審査・複雑) | ★★☆☆☆ (モール仕様) | 集客力ゼロ・予算あり 高い手数料を払ってでも「楽天の集客力」を買いたい場合。 |
※ 手数料等は2026年1月時点のものになります(出典:各社公式サイト)
結論:初心者は「BASE」か「STORES」の無料プラン一択
もしあなたの会社が、「まだECの売上はゼロ」で、「専任のWeb担当者もいない」のであれば、迷わず BASE*か STORES の無料プランから始めてください。
理由は3つあります。
1. 固定費がゼロであること
売上がゼロの月でも、ショップの維持費がかかりません。これは、最初の一歩を踏み出す上で最強の精神安定剤になります。「失敗しても金銭的ダメージがない」という状態が、挑戦を後押しします。
2. 圧倒的に「カンタン」であること
この2社は、「Web知識のない個人」でも使えるように設計されています。管理画面は直感的で、マニュアルを読み込まなくても、「商品登録」「デザイン設定」などのボタンを押していけば、数時間でそれっぽいショップが完成します。Shopifyのように「英語のアプリ説明を読む」必要も、「HTMLを触る」必要もありません。
3. 「辞める」のも簡単であること
あえてネガティブなことを言いますが、やってみて「やっぱりウチの商品には合わないな」となる可能性もあります。その時、数百万円かけて作ったサイトなら引くに引けませんが、無料で作ったショップなら、浅い傷で撤退が可能です。この「軽やかさ」こそが重要なのです。
よくある質問:Shopifyはダメなの?
「でも、これからはShopifyが主流だって聞いたけど……」
おっしゃる通り、Shopifyは世界シェアNo.1の素晴らしいショッピングシステムです。将来的に月商が数百万、数千万と伸びてきたら、移行先の筆頭候補になります。
しかし、「最初から」使うにはハードルが高すぎます。
運用コスト(月額+アプリ代)がかかる上に、日本独自の商習慣(代引きや細かい配送指定など)に対応させるのに一苦労することもあります。
まずは無料カートで「ネットで物が売れる」という体験をし、月商が安定して300万円を超え、機能不足を感じ始めたタイミングで、満を持してShopifyへ引っ越す。これが最も効率的で、賢い「成長の階段」です。
モール(楽天・Amazon)はどうなの?
「楽天に出せば売れるんじゃないの?」
半分正解で、半分間違いです。確かに楽天には巨大な集客力があります。しかし、その分「出店料」と「ロイヤリティ(手数料)」が非常に高いです(売上の2〜3割が手数料で消えることもザラです)。
また、楽天で売れても、お客様は「楽天で買った」と認識し、「あなたのお店で買った」とは覚えてくれません。つまり、自社のファン(顧客リスト)が資産として残りにくいのです。
また楽天やAmazonでは商品数の多さが大事な要素です。初めてのワンオペEC担当者にはつらい運営になります。
自社のブランドを育てたいなら、多少苦労してでも「独自ドメイン(自社ECサイト)」を持つことを強くおすすめします。
第3章 【事例分析】成功する企業と失敗する企業の違い


では、実際のクライアントの事例としてスモールスタートで成功した企業と、いきなり大きく始めて失敗した企業を見てみましょう。この対比の中に、あなたの会社が取るべき戦略のヒントが隠されています。
成功事例:地方の食品メーカー A社
勝因:Instagram × BASE無料プラン
従業員20名の食品メーカーA社は、新商品のドレッシングを直販したいと考えました。しかし予算はなく、PCが得意な社員もいません。
そこで彼らは、BASEの無料プランでシンプルなショップを開設しました。こだわったのは「機能」ではなく「写真」でした。
スマホで撮影したシズル感のある料理写真をInstagramに毎日投稿し、「プロフィール欄のリンクから買えます」と誘導。最初は月数件の注文でしたが、お客様からの感想を丁寧にSNSで紹介することでファンが増加。
半年後には月商50万円を超え、1年後には月商150万円に到達・安定しました。
彼らは今、さらなる機能拡張のためにShopifyへの移行を検討していますが、「最初はBASEで本当によかった。家賃(固定費)がかからない分、浮いたお金を商品のパッケージ改良やSNS広告のテストに使えたから」と語っています。
失敗事例:老舗アパレル問屋 B社
敗因:高機能システム導入 × 写真更新の負荷
一方、B社は「やるなら本格的に」と、制作会社に依頼してShopifyで多機能なサイトを構築しました。初期費用で200万円、月額も保守込みで5万円。補助金が使えるということで金額はあまり気にしていなかったようなところもあったようです。
在庫連動機能や、AIによるレコメンド機能まで搭載しました。
しかし、オープン後に待っていたのは「日々の更新地獄」でした。
多機能なシステムは入力項目が多く、商品登録ひとつに時間がかかります。新商品が入荷しても、写真撮影やスペック入力が追いつかず、サイトには常に「古い商品」が並んだまま。
お客様から見れば「やる気のない店」に映り、離脱率は90%を超えました。
結局、毎月の維持費が重荷となり、1年足らずで閉鎖。高機能なシステムは、使いこなせる「人」と「時間」があって初めて輝くのだという教訓を残しました。
第4章 【反論とリスク】簡単そうだけど、実際どうなの?
ここまで読んで、「理屈は分かったけど、実際のECサイト運営の現場はそんなに甘くないのでは?」と思われた方もいるかもしれません。ここでは、よくある懸念点やリスクについて、正直にお答えします。
Q1. 商品写真の撮影とか、素人には無理じゃない?
A. 実は、「スマホ+自然光」で十分です。
プロのような機材は不要です。最近のスマホカメラの性能は驚くほど高く、晴れた日の窓際(自然光)で撮るだけで、十分に清潔感のある写真が撮れます。
STORESなどは、「売れる写真の撮り方ガイド」を無料で公開しています。背景に白い画用紙を敷く、余計なものを入れない、といった基本を守るだけで、見違えるような写真になります。
むしろ、プロが撮った完璧すぎる写真よりも、スマホで撮った少し手作り感のある写真の方が、「嘘がない」として中小企業のECでは好感を持たれることすらあります。
また、生成AI等を使うことで商品をよりよく見せる手法なども利用できます。
Q2. 本当にずっと無料でいけるの?
A. いいえ、売上が増えたら「有料」の方が安くなります。
BASEやSTORESの無料プランは、月額が無料の代わりに、売れた時の手数料(3.6〜5%+α)が高めに設定されています。
一方、有料プランは、月額がかかる代わりに手数料が安いです。
損益分岐点は、だいたい「月商30万〜50万円」あたりです。
ここを超えてきたら、有料プランに切り替えた方がトータルのコストは下がります。つまり、「売れてからプランを変える」のが正解です。最初から有料にする必要はありません。
Q3. 集客コストはどう考える?
A. 最初は「0円集客」に全振りしましょう。
「ECを始めたら広告を出さなきゃ」と思いがちですが、不慣れなうちは広告費を溶かすだけです。
まずはInstagram、X(Twitter)、Facebook、LINE公式アカウントなど、無料で使えるSNSをフル活用してください。
「商品の裏側」や「開発秘話」、「スタッフの日常」など、中小企業ならではの人間味のある発信が、ファンを作る一番の近道です。クライアントの中には広告は一切せずSNSだけで集客を行い毎年売り上げをあげている企業もあります。
広告を出すのは、「この商品は確実に売れる」という勝ちパターンが見えてから。予算は「売上の5%以内」と決めておくのが安全です。
第5章 【チェックリスト】今日から始める「失敗しない」3ステップ


さあ、理屈はもう十分です。
最後に、あなたが今日、デスクに戻ってすぐに取り組める「最初のアクション」を3つのステップにまとめました。
Step 1:コスト試算(シミュレーターを叩く)
まずは頭の中の不安を数字に落とし込みましょう。
BASEには、「料金シミュレーション」のページがあります。「月にこれくらい売りたい」という数字を入力すれば、手数料がいくら引かれ、手元にいくら残るかが一発で分かります。
これを見て、「意外と手残りはこれくらいか」「悪くないな」と現実的な感覚を掴んでください。
Step 2:資料請求・アカウント作成(リスクゼロ)
次に、BASEかSTORES(あるいは両方)の無料アカウントを作成してください。
メールアドレスさえあれば、1分で終わります。
お金は一切かかりません。「アカウントを作ること」と「店を公開すること」は別です。まずは管理画面に入り、「商品登録画面」を見てみてください。
「あ、これならブログを書くより簡単かも」
そう感じられたら、もう8割は成功したようなものです。
Step 3:「ショップの顔」を整え、1商品を作り込む
アカウントを作っただけでは、まだ商品は売れません。まずはショップの「顔」となるデザイン設定(ロゴやカラー)を整えましょう。
その上で、いきなり全商品を並べるのではなく、「一番売りたい自信作(キラー商品)」を1つだけ決めてください。
ただ登録するだけでは意味がありません。「誰に」「どんな価値」を届けるのか? そのための写真は魅力的か? キャッチコピーは?
この「1商品の販売戦略」を練り上げ、入魂の商品ページを作り込んでから公開すること。これが遠回りのようで最短の道です。
おわりに:あなたの会社の「最初の一歩」を応援します
オンラインショップの立ち上げは、決して魔法のような一発逆転の策ではありません。
地味な作業の積み重ねです。写真も撮らなければいけないし、梱包もしなければなりません。
しかし、だからこそ、「小さく始める」ことが重要なのです。
背伸びをして高価なシステムを入れる必要はありません。プロに丸投げして、ブラックボックスにする必要もありません。
無料のツールを使って、自分たちの手で、ひとつずつ商品を並べ、一人ひとりのお客様に向き合う。
その泥臭いプロセスの中でしか、「売れる感覚」は養われません。
失敗しても、無料プランなら傷は浅い。
うまくいけば、そこからいくらでもシステムは大きくできる。
今の時代、中小企業にとってこれほど好条件な挑戦の場はありません。
もし、このように地道ですが一からやっていきたいという企業様でサポートが必要な場合には私がお役にたちますのでぜひご相談ください。いい商品はあるのにITがまったくわからなからネット販売もできないという数株の企業様と一緒に実績をつくってきたのが私の強みです。
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